この数年はデパートに行くたびに、美術画廊を覗くようにしている。むしろ美術画廊を覗くためにデパートに行く事のほうが多いような気さえする。もともとデパートの雰囲気が好きで用もないのにぶらぶら歩いたりしていたので、新たな楽しみが増えたというような感じだ。
数週間前に松坂屋で「近代陶芸巨匠展」という企画がやっていた。巨匠っていったい誰なんだろうと調べたら、有名な名前ばかりだったのでこれは行くしかないと運良く名古屋に用事があったので松坂屋に寄り道した。ひとまずグルっと一周したけれど、ついている値段がとにかく大きくて、気軽にさわっていいのか戸惑った。たしか板谷波山のだったと思うのだけれど2625万円の札がついていた。小市民の僕には作品自体よりその数字が強く記憶に残ってしまった。その作品は一昨年の愛知県陶磁資料館の「明治の人間国宝」展でいくつか見たような雰囲気で、あの時のものに値段がつくとこういうことになるのか(もっと高いのだろう)とまたしてもお金のことを考えてしまった。ともかく僕が見た値札の最高記録を更新したのでしばらくは忘れないと思う。
作品としては加守田章二の壺(花入?)がもっとも強く記憶に残っている。湯呑みなどではなくて、大きな作品を間近に見てみたいとずっと思っていたので、その機会が得られたのはとてもうれしかった。ザ・加守田章二という雰囲気の作品を見てしまってからは、ますます気になって仕方がなくて、どこかで加守田章二展をやってくれないかなと思っている。