「道の駅織部の里もとす」と「織部展示館」

道の駅 織部の里もとす Michi-no-Eki Oribe no Sato Motosu

ずっと気になっていた「道の駅織部の里もとす」と、そのなかにある「織部展示館」に行ってきた。この道の駅は行ってみる価値があった。まず、立派な山門が出迎えてくれるので通り過ぎることはない。そして、その中に「織部展示館」という古田織部や織部焼を紹介する展示館がある。これがなかなかいい展示館だった。

織部展示館の入場料は300円だった。300円がもったいないのか入らない人がいるおかげで、展示館の中は騒々しくもなく、落ち着いて展示物を見ることができてちょうどいいと思った。そんなことより、この展示館に入ってすぐに出迎えてくれるのが、私が気になっていると言っていた「『泪』の茶杓」だ。正確にはその複製品だ。その泪の銘の茶杓と、古田織部が千利休の位牌代わりに拝んだという真っ黒の漆塗りの筒と共に置いてあった。複製品とはいっても、これを見て感激した。茶杓の展示のすぐ下の解説によると、千利休は切腹に際して古田織部と細川三斎に茶杓を送っていて、それぞれの銘が「泪」と「命」だそうだ。この銘はのちの時代になって与えられたものらしい。

道の駅の中にある展示館としてはなかなかの出来だと思った。たしかに財政的に限りのある中ではあるものの、写真と実物とがをうまく組み合わされていて、解説がなかなかうまいおかげもあって、古田織部という人がどういう生涯を送ったのかをよく知ることができた。茶人としてではなく、戦国武将としても古田織部は活躍していたのだと知ることができたのが私にとっては大きかった。展示館のなかには古田織部のほかに、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の像もあって、そしてその三人が古田織部について語ってくれるという趣向は私の好みにも合って興奮した。

この道の駅では「織部焼の絵付け体験」や「そば打ち体験」などもあって楽しいところだと思う。数は多くないものの駅の中では織部焼も売っている。それに道の駅と言えば定番の、新鮮な野菜や果物といった農産物などの特産品もあった。「織部の里の米」というお米まで売られていた。それからこの夏の時期なので、カブトムシやクワガタがたくさん売られていた。オオクワガタが5000円以上で売られているのを見たのは初めてだったので少し驚いた。私は食べなかったけれど、この道の駅では「織部薬膳弁当」や「織部正定食」というのがかなり人気らしい。それに、そばは注文を受けて打っているので、時間は少しかかるけれど味には自信ありとのことだった。

お茶杓のご銘は?

いまは徳川美術館について予習の最中である。勝本師に教えてもらった徳川美術館の収蔵品はさすがだった。そんな名物ぞろいの収蔵品の中でも特に気になっているのが、千利休の作った茶杓である。つけられた銘は「泪」というから哀しげだ。この茶杓には物語があって…

天正十九年(一五九一)二月、豊臣秀吉に切腹を命ぜられた千利休が、自からこの茶杓を削り、最後の茶会に用い、古田織部に与えた。その後、古田織部はこの茶杓用に、長方形の窓をあけた筒をつくり、その窓を通してこの茶杓を位牌代わりに拝んだと伝えられる。筒は総黒漆塗で、これを垂直に立てると、いかにも位牌らしくみえる。茶杓は白竹で樋が深く通り、有腰で、利休の茶杓の中でもとくに薄作りに出来ている。千利休-古田織部-徳川家康(駿府御分物)-初代義直と伝来した。

なかなか生々しいなということで、なおさらこの目で見てみたい。だが残念なことに現在はこの茶杓は展示されていない。展示の時にもまた足を運ぶことにしよう。

茶杓に限らず名物には素晴らしい銘がつけられている。様々な銘を聞くたびにいろいなことを考えてしまう。写真だけでなく、実際にその茶杓を目にしたら忘れられないかもしれない。