いまは徳川美術館について予習の最中である。勝本師に教えてもらった徳川美術館の収蔵品はさすがだった。そんな名物ぞろいの収蔵品の中でも特に気になっているのが、千利休の作った茶杓である。つけられた銘は「泪」というから哀しげだ。この茶杓には物語があって…
天正十九年(一五九一)二月、豊臣秀吉に切腹を命ぜられた千利休が、自からこの茶杓を削り、最後の茶会に用い、古田織部に与えた。その後、古田織部はこの茶杓用に、長方形の窓をあけた筒をつくり、その窓を通してこの茶杓を位牌代わりに拝んだと伝えられる。筒は総黒漆塗で、これを垂直に立てると、いかにも位牌らしくみえる。茶杓は白竹で樋が深く通り、有腰で、利休の茶杓の中でもとくに薄作りに出来ている。千利休-古田織部-徳川家康(駿府御分物)-初代義直と伝来した。
なかなか生々しいなということで、なおさらこの目で見てみたい。だが残念なことに現在はこの茶杓は展示されていない。展示の時にもまた足を運ぶことにしよう。
茶杓に限らず名物には素晴らしい銘がつけられている。様々な銘を聞くたびにいろいなことを考えてしまう。写真だけでなく、実際にその茶杓を目にしたら忘れられないかもしれない。
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