Nikon AF600 は楽しいカメラだ

Nikon AF600

せっかくなので、カメラの話題を続けてみたい。

もともと「もうコンパクトデジカメは買わず、デジタル一眼レフに乗り換えよう」と考え、カタログを集めて検討していたのだ。しかし、土壇場で変更して、結局再びコンデジ(Canon PowerShot S95)を手に取ることになった。そのすべての元凶であり、理由となったのが「Nikon AF600」というカメラだった。

のちに「ニコンミニ」の愛称で知られるフィルムコンパクトカメラだと知るのだが、当時の私はそんな予備知識もなく、カメラのキタムラのジャンクカゴの底から偶然拾い上げたのだった。

手にとった瞬間、その小ささと安っぽさのなかに漂う、独特の面白さに惹きつけられた。ボタン類はすべてゴム製で、外観で見える唯一の金属パーツはむき出しのネジだけなのだ。全身プラスチックで覆われたボディだが、その一切の無駄を削ぎ落とした潔いデザインに釘付けにされた。レンズの脇に刻まれた「Nikon Lens 28mm 1:3.5 Macro」の文字も頼もしく、スナップに最適な広角レンズであることも購入の決め手になった。

名前の通り小さく軽い AF600 は、カバンの中に無造作に放り込んでどこへでも連れ出せる。36枚撮りのネガフィルムを詰め、街を歩きながら赴くままにシャッターを切ると、あっという間に1本を使い切ってしまった。

機材の重厚さや設定に縛られず、「気楽にシャッターを切ること自体が楽しい」という写真の原点を教えてくれたのは、間違いなくこのカメラだ。一眼レフでじっくり構えるよりも、この軽快さこそがスナップの醍醐味なのである。だからこそデジタルの世界でもコンパクト機(S95)という選択に立ち返ることになったのだ。

余談だが、この時代のカメラには大抵「パノラマモード」が付いていた。フィルムの上下を機械的にマスクして横長に見せる、あのアナログな仕組みだ。90年代のカメラの大きなトレンドだったが、現像されたやたらと横長で大きなプリントの保管に文句を垂れていたことも懐かしく思い出される。

以前紹介した「クリアショットu」は、使い捨てカメラの延長にあるような固定焦点機だった。一方で、AF600 はオートフォーカスを載せつつも、実質的には広い被写界深度で空間をまるごと切り取るパンフォーカスの思想を持っている。クリアショットuとは一線を画す、芯のあるすっきりとした描写には驚かされた。

昨今の「とにかく背景をボカせば良い写真に見える」という流行は、そろそろ一巡するだろう。画面の隅々までシャープに記録する、パンフォーカスの面白さこそが次に来るはずだ。

AF600 は、気兼ねなくシャッターを切る快感と、ニコンらしい鋭い描写性能を見事に両立させた名機である。S95 を手に入れた今でも、ふとこの小さなカメラをポケットに忍ばせて街へ出たくなるのだ。

参考:ニコンミニ AF600QD/Lite-Touch AF

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