投稿者: 玉井 裕也

  • 2625万円

    この数年はデパートに行くたびに、美術画廊を覗くようにしている。むしろ美術画廊を覗くためにデパートに行く事のほうが多いような気さえする。もともとデパートの雰囲気が好きで用もないのにぶらぶら歩いたりしていたので、新たな楽しみが増えたというような感じだ。

    数週間前に松坂屋で「近代陶芸巨匠展」という企画がやっていた。巨匠っていったい誰なんだろうと調べたら、有名な名前ばかりだったのでこれは行くしかないと運良く名古屋に用事があったので松坂屋に寄り道した。ひとまずグルっと一周したけれど、ついている値段がとにかく大きくて、気軽にさわっていいのか戸惑った。たしか板谷波山のだったと思うのだけれど2625万円の札がついていた。小市民の僕には作品自体よりその数字が強く記憶に残ってしまった。その作品は一昨年の愛知県陶磁資料館の「明治の人間国宝」展でいくつか見たような雰囲気で、あの時のものに値段がつくとこういうことになるのか(もっと高いのだろう)とまたしてもお金のことを考えてしまった。ともかく僕が見た値札の最高記録を更新したのでしばらくは忘れないと思う。

    作品としては加守田章二の壺(花入?)がもっとも強く記憶に残っている。湯呑みなどではなくて、大きな作品を間近に見てみたいとずっと思っていたので、その機会が得られたのはとてもうれしかった。ザ・加守田章二という雰囲気の作品を見てしまってからは、ますます気になって仕方がなくて、どこかで加守田章二展をやってくれないかなと思っている。

  • 夏を感じるとき

    毎日同じような道を走って大学に通っている。同じだから小さな変化にも敏感になれるように思う。いつもと場所が変わっていたり、いつもと違う色や形になっていたりということを見つけるのは楽しい。

    梅雨の合間に青い空を見ると夏がきたんだと強く感じる。沿道の木々も春のやわらかな色からくっきりとした力強い緑色になったのもわかる。とりわけ強く夏を感じるのは、アスファルトにできた木の影が濃くなっている時や、木陰が湿っぽく感じた時だ。それはたぶん、学校帰りに木の影で休んだりしながら帰った小中学生の頃の記憶のせいのように思う。

    大学への途中で、人家の途切れるところがある。木のまばらなところに洩れてくる光が眩しいのも夏らしいと感じる。

    woods

    woods

    woods

  • うるう秒

    何も用事がない日は一日中ゴロゴロ過ごしてしまって夕方になって後悔し始めて憂鬱な気分で一日を終えていることが多いような気がしている。そんなことがないように今日は早く起きるようにした。雨が降っていてとても涼しくていい一日になりそうな予感はしたのだけど、結局何もしていない。

    実は今日はうるう秒のためほんの一秒だけど一日が長かったらしい。だけどたったの1秒では実感することもなかった。1秒ではなくてもうちょっと長く1時間ぐらい長くしてくれたら喜ぶ人も多いだろうにと思った。せっかくの休日なのにくだらないことを考えているだけの一日になりそうだけど、明日までの宿題ぐらいは明るいうちにやっておこうと思う。

  • 美山へ蛍の撮影に

    山田くんから蛍を撮影しようと誘われたので行くことになった。下調べをしてみると三脚が必要だとわかったけれど、持っていないものは仕方がない。いつもオートフォーカスのPモードでしか撮影していない僕にはマニュアルの撮影は難しかなと思ったけれど、フイルムとは違ってデジタルならその場で試行錯誤しながらなんとかなるだろうと説明書とともにカメラを持って出かけた。

    おなじ山県市とはいっても僕には旧美山町のことはよくわからない。山田くんに道案内をしてもらいながら日が沈む前にと奥のほうへ向かった。少し開けてきたところで車から降りるとまだ肌寒くて水も冷たかった。川の水も綺麗すぎるのか蛍は棲んでいないみたいだった。なにより驚いたのはこんなに奥の方にも人が棲んでいるということだ。どこにでも生活が存在ているということに人間の強さを感じた。

    奥過ぎても水が冷たくて蛍はまだ出ていないとわかったので、場所を変えながら撮影スポットを探ることにした。撮影に光は邪魔なので、そのため車があまり通らなくて街灯のない川の近くがいい。そんな場所も教えてくれて撮影をした。説明書を片手にこれまで触ったこともないボタンをいっぱいさわって撮影した。手持ち撮影にはそれにしかない楽しさがあるし、ヘッドライトが入ってきてもそれはそれで面白く撮れて悪くないと思った。マニュアルで撮影する楽しさも知ることができてとても得した夜だった。

    さいごに蛍の写っている写真をすこし貼ることにしよう。このほかの写真はこちら

    Hotaru

    Hotaru

    Hotaru

  • 風炉の季節の抹茶

    昨日は淡交会の研究会に行ってきた。初めてなのでよく解らなくて不安だったけれど、行ってみるとそんなことはなくてとても勉強になる一日だった。大勢の前で点前を見せる人がいてそこに業躰の先生が指導をしていくので、それを聞いて勉強するという会だった。(実はずっと業躰というのがどういう人たちなのかよく知らなくて、茶道教室の先生の親玉みたいな存在なのだと少し前まで思っていた。)今回の先生はとても饒舌で楽しい話ばかりだった。

    濃茶の話の時に一番に印象に残ったのは抹茶の話だった。この風炉の既設というのは古いお茶なので見た目も風味もあまり良くない。風炉と炉というのはそういうところも違うんだということを言っていた。僕はそれを聞いてすごく大切で根本的なことなのにこれまでまったく気に留めていなかったことがあったのだと知らされたような気がした。冷蔵庫に入れておけば一年中美味しいお茶が飲めるというわけではない時代があったのだ。色々なことを考えさせられた。