私は香港映画が好きだった。いつか香港映画のロケ地を見て回りたいと思っていた。ついに香港に行けたので、ロケ地を見つけたら写真を撮った。下調べをしてから訪ねたものの、当時の建物はすでに姿を消していることも多かった。ここに写真を並べ、私自身の備忘録として残しておきたい。
まずは、ウォン・カーウァイの「恋する惑星」に出てきたミッドレベルエスカレーターだ。世界で最も長いというエスカレーターだ。20本ほどのエスカレーターと歩く歩道が連結されて、全長800メートルに及ぶ高低差を繋いでいる。この途中の何処かに、トニー・レオンの扮する警官663号の家があるのだ。フェイ・ウォンがエスカレーターから覗いていたあの部屋は、撮影監督のクリストファー・ドイルが当時住んでいた部屋だったそうだ。エスカレータに乗ると、その脇の薄いすりガラスのすぐ先に誰かの生活の存在を感じるほどの距離感だ。
「恋する惑星」といえば、原題の「重慶森林」にもなっている重慶マンションにも寄った。外見上は何ということはなさそうなショッピング街のようだったけれど、中にちょっと入るとごちゃごちゃしていることがわかった。
一歩足を踏み入れると、あの映画のままの独特の混沌とした空気に包まれた。この隙間を縫うように金城武が走って行くシーンもあった。ブリジット・リンが銃を持って逃げたのもここだったはずだ。
重慶マンションの上の方はホテル(宿)になっていた。「天使の涙」で、この何処かに金城武が父子で住んでいる場所があった。金城武が手持ちのビデオカメラで嫌がる父親を撮影しているシーンが思い浮かぶ。
「恋する惑星」でトニー・レオンがフェイ・ウォンと話をする軽食スタンド(ミッドナイト・エクスプレス)があった場所は、いまはセブンイレブンになっているらしい。写真は別の場所のセブンイレブンだけど、カリフォルニア・ドリーミングが聞こえてきそうだ。
香港といえば夜景だ。香港島でも、九龍でも、夜景は見られたけれど、「2046」に出てきたようなネオンサインは見られなかった。時代の移ろいと共に、あの鮮やかな光景は姿を変えてしまったようだ。
香港の中環にある旧最高裁判所だ。これもいろんな映画で見かける。「男たちの挽歌」では、タバコを吸うチョウ・ユンファの背景でも出てくる。
マクドナルドをいたるところで見かけた。香港でマクドナルドと言えば、私にとってはピーター・チャンの「ラブソング」だ。レオン・ライがハンバーガーのトレイに敷かれた紙を持ち帰って、便箋にして本土の恋人あての手紙にするというシーンを思い出してしまう。カウンターでアルバイトをしていたマギー・チャンからトレイを受け取ったあの瞬間の映像も、不意に脳裏をよぎる。
写真は香港トラムだ。外見はきれいにペンキして広告が貼られているけれど、中はおどろくことに木造なのだ。香港トラムといえば、レスリー・チャンとアニタ・ムイの出てくる「ルージュ」だろう。木造の骨組みを見て、そんなことを思った。











