サントリー・ローヤルとアストル・ピアソラ

アストル・ピアソラの音楽が好きだ。

私が惹かれているのは、踊るためのタンゴというよりも、ピアソラが切り拓いた「聴くための現代的なタンゴ」の張り詰めた響きだ。哀愁と情熱が入り混じった独特の旋律は、何度聴いても飽きることがない。

日本でピアソラの名が広く知られるようになったきっかけといえば、かつてサントリー・ローヤルのCMで流れた『リベルタンゴ』だろう。チェリストのヨーヨー・マが演奏したアルバム『プレイズ・ピアソラ』のヒットは、日本における一大ブームの始まりだった。一人の偉大な演奏家をきっかけに、それまで遠かった音楽の扉が急にひらかれていくのは面白い。私自身はリアルタイムでそれを味わっていないが、そのブームの広がりこそが、私がピアソラのファンになるきっかけだった。

昔は、ピアソラやアルゼンチン・タンゴのCDを集めようと街のショップを巡っても、タンゴのコーナーを見つけることすら難しかった。輸入盤を探しても高価で、なかなか手が出なかった記憶がある。

それが今や、インターネットを開けば、同じひとつの名曲に対して世界中のあらゆる演奏家が試みたアレンジや演奏がいくらでも見つかる。ひとつの曲がこれほど多様に解釈されているのを聴き比べるのは、本当に贅沢な時間だ。かつて手探りで探していたあの濃密な音楽が、いまは手元ですぐに楽しめるのだからありがたい。


(あわせて読みたい)
私がピアソラに出会うきっかけとなった映画の話:ブエノスアイレス

コメント

4 responses to “サントリー・ローヤルとアストル・ピアソラ”

  1. 松崎 Avatar

    こんにちは。セミナーではお世話になりました、Dグループの松崎です。陶芸のお話やフィルムのお話を鴨川で伺ってとても楽しかったです!最終日、辻さんに教えてもらって見つけちゃいました!すてきなブログですね~
    アストル・ピアソラ、なにげにCDを持っていました。実家に置いたままになってしまっていますが、実家に帰ったらきちんと持ってきたいな、と思いました。
    ブログも、とても読んでいておもしろいです!
    私は、なかなか「ムーラン・ルージュ」という映画がすきなのですが、作中でユアン・マクレガーがカバーするエルトン・ジョンの「ユアソング」やタンゴからポリスの「ロクサーヌ」もなかなかすてきなのです(玉井さんはどうか分からないのですが、つい連想したので、書いてみてしまいました)唯一のオリジナル曲「what come may」も好きな松崎でした。
    好き勝手書いてしまいました・・ごめんなさい><
    いろいろとお世話になりました!

  2. 玉井 裕也 Avatar

    松崎さん
    こちらこそ、セミナーではお世話になりました。
    私もムーラン・ルージュ好きですよ。ユアン・マクレガーも好きです。
    「ロクサーヌ」や「what come may」もチェックしてみます。
    (もう何年も映画館に行っていませんが、ミュージカル映画は全般的に好きです。)
    映画が元で音楽が好きになることが私は多くて、ピアソラの音楽が好きになったきっかけの一つも実は映画です。
    王家衛の「ブエノスアイレス」という映画で使われていた「milonga for three」という曲が印象的だったのですが、そのころテレビCMでヨーヨー・マが演奏する「リベルタンゴ」も聞いたのです。
    今にして思えば、私もピアソラブームから聴き始めた一人だったみたいです。

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