昨年秋に上海を旅した際に、中国茶をいくつか買い求めた。現地の茶荘での手ほどきを思い出しながら、どうすれば美味しくいれられるのかと試行錯誤を続けている。
いま愉しんでいるのは鉄観音だ。手元に専用の茶器はないため、日本茶を飲むときに使っているいつもの急須と湯のみで代用している。
中国茶の面白さは、沸かしたての熱湯を注ぎ、何煎もその変化を重ねていける点にある。一説によれば、高級な鉄観音の味わいはこのように変化していくという。
一煎目はお湯の味
二煎目はお茶の味
三、四煎目は精髄の味
七、八煎目は最も香り高い味
確かに上海の店でも、何杯ものお茶が目の前に差し出された。一煎目は湯のみに注いだあと、そのまま潔く流して茶器を温めていた光景が蘇る。この言葉を知ってからは、一煎目を淹れるたびに「お湯の味」という含蓄をどこか意識してしまう。
そういえば、上海の外灘(バンド)で偶然声をかけてきた、日本語の達者な現地の人はこんなことを言っていた。
「日本ではサントリーのせいで烏龍茶は黒いものだと思われているみたいだけど、本当はね、緑色なんだよ。」
鉄観音も烏龍茶のひとつだが、その水色(すいしょく)は驚くほど美しい緑色をしている。湯のみのなかに広がるその淡い緑を眺めるたびに、あの外灘の風の匂いと、彼の言葉を静かに思い出している。








