岐阜柳ケ瀬の西の端に、朝日劇場という映画館がある。
郊外のシネコンの隆盛と共に、かつてのように柳ケ瀬へ映画を観に行くという習慣は、いつの間にか岐阜の街からも廃れてしまったようだ。賑やかだった通りから、映画館がひとつ、またひとつと姿を消していく風景には、やはり一抹の寂しさを覚える。私自身、小中学生の頃は、夏休みや春休みになれば、必ず母に連れられて柳ケ瀬の映画館へ足を運んだものだった。
季節が巡り、今年も家族向けの映画がいくつも公開されている。しかし、この朝日劇場はピンク映画の専門館であるため、夏休みだからといって家族連れの姿が見られるわけではない。私自身、まだ一度もその受付の敷居を跨いで、上映室に入ったことはない。それなのに、高校時代から何度も、わざわざこの劇場の前を通りがかったものだ。どこか妖しげなポスターを横目で見ながら、何事もないかのように通り過ぎる。知り合いに見つかった時のための、せめてもの言い訳を頭の中で用意しながら歩くのが精一杯だった。
朝日劇場は、今では珍しくなった三本立ての上映を続けている。映画館で「三本立て」という言葉に触れること自体、ノスタルジーを感じさせる大切な要素だ。一時間の作品が三本で、入場料は1700円らしい。かつて文字通り時代を席巻した団鬼六の作品などは今回は組まれていなかったが、不思議といつ訪れても、三つのうち一つは彼の名が冠されていたような記憶が残っている。
この劇場の前には、白い「上映中!!」という看板が今も掲げられており、街の風景の中で変わらないものの安心感を静かに与えてくれる。「今、ほとばしる快感、熱きエロスの衝撃!!」という手書きの文句も、相変わらず眩しかった。
今度は勇気を振り絞り、あえて明るい時間帯の柳ケ瀬を歩き、この劇場の扉の向こうを眺めてみよう。そうすれば、上映中の劇場の本当の気配や、もっと面白い意匠に出会えるような気がしている。ちなみに、このすぐ近くには「まさご座」というストリップ劇場もあるのだが、その話はまた次の機会に譲ることにしたい。
(flickr に写真を幾つかアップロードした。)



